古社への誘い 神社散策記

たまには静かなる社の空間に身をまかせ、心身共にリフレッシュしてみませんか・・・・

滝ノ入住吉神社

 ゆず(柚/柚子)はミカン科の常緑樹で,日本の代表的な調味用かんきつ類である。中国原産。長江(揚子江)上流が原産地といわれ、奈良時代に中国から朝鮮を経て渡来したと推定されている。古くから薬用として、また調味料として、ゆずの持つ独特な香りと酸味は人々に広く愛用されてきた。しかし、多くは屋敷の周りや畑の畦に実生のゆずが植えられ、本格的な栽培は、毛呂山町を始め、京都市水尾、大阪府箕面市止々呂美など、23の地域に限られていた。
 毛呂山町のなかでも、滝ノ入・阿諏訪・大谷木地域は、南斜面で風当たりが弱く、霜がほとんど降らない、ゆず栽培に適した条件がそろっていたため、ゆず栽培が盛んに行われてきたという。毛呂山町のゆず栽培の歴史は古く、『新編武蔵風土記稿』には、毛呂山町の滝ノ入地域(当時は瀧野入村)の土産として「柚子を数十駄(一駄は135g)を産出している」と紹介されていて、日本で最古の産地のひとつといわれている。
 昭和初期、ゆず栽培は、毛呂山町滝ノ入地区全域に広まる。毛呂山のゆずは、香りが強く「桂木ゆず」の銘柄として全国に名を売るまでになった。その後、阿諏訪・大谷木両地域の生産農家も本格的に栽培を行うようになり、昭和30年代には全国有数の産地となったという。
        
            
・所在地 埼玉県入間郡毛呂山町滝ノ入909
            
・ご祭神 底筒之男命 中筒之男命 表筒之男命
                 
神功皇后 大山津見命 菅原道真公
            
・社 格 旧瀧野入村鎮守・旧村社
            
・例祭等 祈年祭 211日 秋季例大祭 10月第3日曜日(古式ささら獅子舞)
                 
新穀感謝祭 1123
 毛呂山町・出雲伊波比神社の西側を通る埼玉県道39号川越坂戸毛呂山線を南西方向に進み、JR八高線の踏切を越えた先にある「毛呂本郷」交差点を更に直進する。因みにこの県道39号線は、「毛呂本郷」交差点で終点となり、民家の立ち並ぶその先の道路の道幅は地元の酒造会社までの約300m程までは狭くなるので、道路状況を確認しながら進む必要がある。
 酒造会社先の二又路を右斜め方向に進路変更し、「滝ノ入集会所」を右手に見ながら1㎞程道なりに進むと、「毛呂山町ゆずの里 オートキャンプ場」の看板があり、その先に滝ノ入住吉神社の社号標柱が見えてくる
        
         長閑な里山風景を眺めながら進む先に見える社の社号標柱
『日本歴史地名大系』 「滝野入村」の解説
 毛呂本郷の西、越辺川支流の毛呂川(滝ノ入川)上流域の山間村。慶長二年(一五九七)と思われる検地帳(毛呂山町史)は一部を欠くと思われるが、田・畑・屋敷合せて高辻四五貫三〇一文で、本辻三三貫九〇〇文。田園簿に村名がみえ、田高七〇石余・畑高一三五石余で幕府領、ほかに紙舟役一貫七四文がある。寛文八年(一六六八)に検地があり(風土記稿)、元禄郷帳では高二三七石余。
滝ノ入地域を含む毛呂山町西側は黒山自然公園に指定された外秩父山地、北東は岩殿丘陵にはさまれた地形により、町全体に美しい川や緑・田畑の景色が広がっていて、キャンプや川遊びなどを通じ、豊かな自然を満喫できる地である。またこの地域は、柚子の名産地としても知られ、日本最古の栽培柚子である「桂木ゆず」といった特産品もあり、町のトレードマークともなっている。
        
                道の傍らに建つ社号標柱
 周囲は山で囲まれ、社と道路の間を綺麗な毛呂川が沢となって流れていて、自然と一体化したような美しい場所。参拝した時期は2月中旬でありながら、天候も小春日和で風もあまり冷たくなく心地良い。参拝時、サイクリングで訪れていた方も、暫しその風景に眺めながら一時の休憩を楽しんでいる様子で、すれ違いざまに挨拶するその言葉一つにも温かさが感じられた。
 
 社に通じるルートは社号標柱がある場所の手前にある路地に入り、そこから下るように進む一本道があり(写真左)、そのすぐ先にある橋を渡る(同右)。橋を渡った先の二又路を右折すると、社の正面に到着する。因みに、橋の先に見える小高い丘上に建っている建物は社の社務所であると思われる。
 
   参道の橋上から眺めると、社殿の右側に綺麗な毛呂川が沢となって流れている(写真左・右)
        
                 滝ノ入住吉神社正面
 鳥居の左に『滝ノ入・ローズガーデン』があり、右の木の奥に綺麗な毛呂川が流れている。

『滝ノ入ローズガーデン』は、平成12年(2000)に滝ノ入地域の活性化を目指した「もろもろ町おこし事業」の一環として、ボランティアによって始められたバラ園である。平成20年に現在の場所に移転し、平成21年にリニューアルオープンした。
・面積 約2,800平方メートル
・バラの本数 約1,500
・バラの品種数 約350
・バラの品種名 ダマスク、アルバ、ケンティフォリア、ガリカ、モス、チャイナ、ポートランド、ノアゼットなどのオールドローズやハイブリット・ティー、フロリバンダ、ポリアンサ、イングリッシュローズ等
 周囲の自然と一体になった美しいバラ園で、長いバラのアーチの中を歩いたり、変化に富んだ散策道を楽しめる。また期間中は、農産物の加工品販売、バラの苗木販売もあるという。
 暖かい季節となった時期にもう一度再来したいものだ。
 
   正面鳥居の手前で左側に建つ手水舎     手水舎の屋根上部に設置されている案内板
        
                    拝 殿
 滝ノ入住吉神社
 神社名 住吉神社 住吉さま
 祭神  底筒之男命 中筒之男命 表筒之男命
     神功皇后 大山津見命 菅原道真公
 由緒

 創立未詳 神体はなく 古老の口碑に別当行蔵寺中興開山教由が永禄年間に勧請し村内鎮守として崇敬した 元和六年二月吉日造営 明暦元年九月造営 宝永三年九月造営 明治五年村社に列せられる 明治四十年字広見山神社 字谷ツ天神社を合祀す 元和六年西暦一六二十年
 入間神社誌より
 住吉神社祭典日 年五回
 一月一日    元旦祭 区長主催
 二月十一日   祈年祭 建国記念日
 十月吉日    秋季例大祭 十月第三日曜日 古式ささら獅子舞
 十一月二十三日 新穀感謝祭 勤労感謝祭
 十二月三十一日 大祓い(以下略)
                           手水舎に設置されている案内板より引用

『新編武蔵風土記稿 瀧野入村』
 住吉社 村の鎭守なり、神體はなく、本地正觀音の立像長五寸餘なるを安ず、慈覺大師の作と云、行藏寺の持、 末社 辨天社 稻荷社 天神社 百姓の持、
 行藏寺 新義真言宗、今市村法恩寺末、愛宕山清林院地藏坊と號す、当寺開基は應永二十一年正月十六日寂せし僧とのみ傳へて、法諡等は失せり、中興開山数祐永禄十一年二月十二日示寂せり、本尊地藏坐像にて、長一尺餘、定朝の作と云、この餘弘法大師彫刻の毘沙門あり、立像にて長一尺五寸、 藥師堂 長一尺餘、恵心の作なり、

        
             境内に祀られている境内社。詳細不明。

 毛呂山町では、獅子舞が町内4ヵ所の地域(大類地域・十社神社、葛貫地域・住吉四所神社、川角地域・八幡神社、滝ノ入地域・住吉神社)で、毎年10月に行われている。
 獅子舞は五穀豊穣や無病息災を祈願し、また人々の安全や幸運を守る地域信仰として、その土地ごとに伝えられてきた文化的にも貴重な財産である。
 滝ノ入獅子舞は、平成23322日 町無形民俗文化財に指定されている。
        
                社殿から見た境内の様子


参考資料「新編む先風土記稿」「入間神社誌」「日本歴史地名大系」「毛呂山町HP」
    「日本大百科全書(ニッポニカ)」「Wikipedia」「事典 日本の地域ブランド・名産品」
    「境内案内板」等
           

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