出丸本若一王子社
・所在地 埼玉県比企郡川島町出丸本101
・ご祭神 伊弉冉命 速玉之男命 事解之男命
・社 格 出丸本、上・下大屋敷、曲師、西谷五ケ村惣鎮守
・例祭等 不明
地図 https://www.google.co.jp/maps/@35.9674624,139.5071749,17z?hl=ja&entry=ttu
国道254号線を川越市方向に進み、「落合橋北詰」交差点を左折する。その後埼玉県道339号平沼中老袋線に合流し、約3.5㎞先の「上大屋敷」交差点を左手前方向に進む。この道路は上記のけんどうでもあり、通称「かわじま中央通り」とも言われ、250m程先の十字路を右折し、400m程進むと左手に「出丸護国神社」の鳥居が見え、その奥手の塚上に出丸本若一王子社が鎮座している。
出丸出丸護国神社正面
写真では鳥居の左側には駐車可能なスペースが確保されているが、ロープが張られている為、反対側である右側にあった路駐スペースに停めてから参拝開始する。
出丸出丸護国神社拝殿
拝殿手前には出丸本若一王子社の境内に通じる道がある。
但し、社は南北に長く、一旦南側にある鳥居にまで戻る必要はある。
出丸本若一王子社正面
川島町出丸地域街中に鎮座。とはいえ東側には工場群が立ち並び、それ以外の地は、田畑風景の中に民家が立ち並ぶような、喉かで静かな地域である。
鳥居正面 鳥居上部にある扁額にはうっすらと
「若一王子社」と見える。
「若王子」とは、紀州熊野三山にまつられる祭神の一つで,十二所権現,熊野五所王子のうちに数えられる。若一王子(にやくいちおうじ)ともいう。《長秋記》長承3年(1134)の記事で〈若宮(わかみや)〉とあるのが本来の呼称であろうが,平安末期の《梁塵秘抄》には〈若王子〉と見える。若王子は京都の白川の禅林寺の北にあり、後白河法王が永暦元年(1160)に熊野権現を勧請したのが始まりで、熊野神社・新熊野(いまくまの)神社とともに京都三熊野のひとつに数えられる。社名は祭神の天照大神の別号「若一王子」にちなむ。〈白川熊野〉ともよばれたが,鎌倉・室町幕府からは所領を寄進され,京都郊外の花の名所でもあったし,全国の具足屋(甲冑の職人,商人)の信仰を集め,若王寺とも記された。
同名の神社は熊野権現を勧請したことにより,「王子信仰」として全国各地に拡大する。
南北に長い参道の先の塚上に拝殿は鎮座する。
時期的にも参拝客はなく、静まり返っている。
参道途中左側にあった「奉納力石」
「享保六年丑二月 奉納力石 三十二メ目 出丸本村」と刻まれている。
「王子信仰」とは、神が高貴な幼児の姿で現れるという信仰。王子,八王子の地名はかつて王子権現をまつった所である場合が多い。熊野信仰では多数の御子神(みこがみ)を熊野詣(もうで)の道にまつり,九十九王子と称した。その第一位は若一(にゃくいち)王子で,天照大神を祭神にするという。日吉(ひえ)信仰,祇園(ぎおん)信仰の八王子権現も有名で,天照大神が素戔嗚(すさのお)尊と誓約した際に生まれた5男3女の神とする。八幡神は応神天皇と神功皇后の母子神を祭神とするが,御子神の応神は王神に由来。新羅王,百済王など外国の王を王子神にする例もあり,祟(たた)りやすい霊をまつる若宮との関係も深い。太子講は聖なる御子来訪の信仰に基づくという。
参道の先にある境内
塚上に鎮座する出丸本若一王子社社殿
川島町出丸本地域は、『新編武蔵風土記稿』において「出丸本村」として記載がある。この村は八ッ林郷土袋庄川島領に属し、古くは「伊豆丸」という地名であった。
・『小田原役帳』…桑原彌七郎九十貫文河越伊豆丸
・『享徳二年那智山米良文書』…武蔵之国いつ丸の郷
その後、寛永十六年にこの地が松平伊豆守の知行地となり、領主の名(伊豆守)を憚って「出丸」と改称したという。伊豆(いず)の表記を[入ず]に改めただけではなく、意味まで逆にしたようで、[入ず丸]ではなく[出ず丸]と変更したという。
当社は出丸本、上・下大屋敷、曲師、西谷の五ケ村の惣鎮守であり、社名は幕末まで「王子権現」「若一王子権現」と呼ばれていて、熊野神社系列の社として中世勧請されたという。
社殿の脇に祀られている金毘羅宮・愛宕社
それとは別の説になるが、比企郡出丸郷鹿飼村(川越市)からこの地に清和源氏新田氏流今井氏が移住し、「イヅマル」と称したともいう。
・新田族譜
「新田又太郎政氏―新田十郎惟氏(住上野国新田郡今井村)―今井五郎惟義―清義―惟清―惟道―惟繁―惟実―惟長―兵部丞惟信(大永二年十二月三日武州須賀合戦打死)―玄蕃助惟良(享禄元年九月移武州入間郡、居処号出丸)―図書助惟辰(元亀二年被殺)―助六惟近(住出丸)」
現時点ではその真相は不明である。
境内の一風景
参考資料「新編武蔵風土記稿」「埼玉の神社」「新田族譜」「享徳二年那智山米良文書」
「世界大百科事典 第2版」「百科事典マイペディア」等