古社への誘い 神社散策記

たまには静かなる社の空間に身をまかせ、心身共にリフレッシュしてみませんか・・・・

小新井熊野神社


        
             
・所在地 埼玉県比企郡吉見町小新井98
             ・ご祭神 家津御子大神 熊野速玉大神 熊野夫須美大神
             ・社 格 旧小新井鎮守・旧村社
             ・例祭等 元旦祭 春日待 415日 夏祭り 715
 埼玉県比企郡吉見町内の北部に位置する小新井地域は、田畑が大部分を占めている長閑な田園地帯である。但し地域南部には、「吉見町ふれあい広場」「陸上競技場」といった施設が設けられているほか、埼玉県道271号今泉東松山線を挟んですぐ南側には、「フレサよしみ」や「吉見町町民体育館」等もあり、町政としても、これらの公共施設が集積している地を地域拠点の一つとして位置づけ、町民の日常生活の利便性や地域交流の活性化を目指しているという。
 この「吉見町ふれあい広場」から北側を100m程進むと、進行方向斜め左側にこんもりした森が見られ、その中に小新井熊野神社は静かに鎮座している。道も社の先で行き止まりとなり、また駐車スペースもないため、路駐にて急ぎ参拝を行う。
       
                 小新井熊野神社正面
『日本歴地地名大系』「小新井村」の解説
 旧荒川筋の河道跡を挟んで上細谷村の東に位置し、北は本沢村。集落は旧荒川の自然堤防上に発達する。古くは上細谷村と一村であったが、明暦年間(一六五五〜五八)に分村したといわれる(風土記稿)。元禄郷帳では高二〇一石余。国立史料館本元禄郷帳では幕府領。宝暦一三年(一七六三)下総佐倉藩領となり、同藩領で幕末に至ったと考えられる(「堀田氏領知調帳」紀氏雑録続集など)。
        
                       正面鳥居と境内の様子
『新編武蔵風土記稿 小新井村』
 小新井村は元上細谷村の内より分村すと云、村名正保の改には見えず、程なく分ちしと見えて、元祿の國圖及鄕帳に始て見えたり、(中略)又新田は東の方一里許荒川の邊にあり、民戸はなし、爰も寛文八年同人檢して高入となれり、
 熊野社 村の鎭守なり、相傳寺持、
 相傳寺 新義眞言宗、今泉村金剛院門徒、不動を本尊とす、村内名主喜右衛門の先祖開基すと云、觀音堂
        
                    拝 殿
 熊野神社  吉見町小新井一七〇-一(小新井字屋敷)
 荒川と市野川の間の低地帯に位置する小新井は、もと上細谷の一部であった。上細谷から分村した年代は明らかではないが、検地の記録からは正保から元禄にあけてのころ(一六四四-一七〇四)と考えられている。
 当社は小新井の名主を務めた金子家(当主は典彦)の中興の祖とされる金子和索が、天文元年(一五三二)に氏神として紀伊国(現和歌山県)の熊野那智神社から勧請したものと伝えられ、以後、金子家の氏神として祀ってきたという。当社の境内が金子家に隣接しているのは、こうした経緯によっており、鎮座地の字名を「屋敷」というのも、金子家の屋敷があることにちなんだものである。
 社蔵の文書によれば、慶長五年(一六〇〇)、小新井が上細谷から分村したのをきっかけに、当社は小新井の鎮守として祀られるようになったもので、またこの時、金子家はそれまで同家の私有地であった境内九八坪を当社に寄進し、社殿を造営して「村の鎮守様」としたと伝える。その後、江戸時代の後期に社殿の造改築を行い、明治四年に村社となった。なお、江戸時代、当社は金子家の先祖が開基した相伝寺の持ちであったが、相伝寺は神仏分離によって廃寺となり、その跡地は集会所となっている。また、当社ははじめ地内の芋島にあったが、いつのころか現在の社地に移されたとの言い伝えもある。
                                  「埼玉の神社」より引用

        
            境内に設置されている「
御社殿造営記念碑」
 この
記念碑文には「當社は天文元年当時の名主金子家直が紀伊国熊野那智大社より勧請し慶長五年に小新井に寄進された 爾来字の鎮守として大切にされてきた」と載せている。「埼玉の神社」では天文元年に「金子和索」が社の創建に関わっていたとの記述であり、「金子家直」と名前が違っている。どちらかの記載ミス、または同一人物ではあるが、何時の頃か「改名」している可能性も捨てきれない。現状ではそれ以上の考察は難しかった。
 
  社殿左側に祀られている天満宮の石祠     境内右側隅には古く小さな石碑がある。

 この碑に刻まれている文字は古く見えづらい。但し所々「奉納」「敷石」「参」と見える事から、「埼玉の神社」に載せられている伊勢参宮記念敷石奉納碑であろうかと思われる。


参考資料「新編武蔵風土記稿」「日本歴史地名大系」「埼玉の神社」等

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